『なよたけ』を学ぶ~古代人と霊魂

私はいま、『なよたけ』という戯曲の
勉強をしています。

演出家協会による研修会で、
来月のリーディング上演の稽古中です。

『なよたけ』は戦後の演劇界に多大な
影響を与えた、
加藤道夫さんの処女作にして代表作。

日本最古の物語りと言われる『竹取物語』
は作者不明ですが、
10C頃に書かれたと言われています。

色々な含みをもつ竹取物語…

その、

《『竹取物語』は、この様に生まれたに
違いない…。》

序章にそう書かれて
『なよたけ』は始まる。
   美しく、不思議な物語り。

私は芝居の勉強をしているはずが、
文学の勉強になり、それがいつか
歴史の学びになり、昨日はとうとう
古代人の生き様に及んできました。

そう、1つの戯曲を学べば
色々と派生してゆくのです。。
(今回のリーディングは研修が目的なので、
毎回 稽古の前に講義も為されています。)

というのも、
『なよたけ』が書かれた時、

加藤道夫さんは、
天からの啓示の様にジロドゥと出会って
彼に没入しており(その詩的世界に)、

また民俗学者 折口信夫さんに非常に強い
影響を受けていたからです。
(著作『死者の書』等に見られる様に
科学を超えた霊魂の存在に)。

ジロドゥは、劇団四季でも
『オンディーヌ』『思い出を売る男』
『間奏曲』等の戯曲が繰返し上演されていて、私にも馴染みのある世界感ですが、

折口作品には、私は今回全く始めて触れて、
カルチャーショックを受けました。

こんな学者が居られたのですね。。

折口信夫(おりくちしのぶ)さんは
民俗学者であり、国文学者。
万葉集の研究者でもあり、
詩人でもある。(1927没)

そして今回のリーディング演出は、
私の恩師である中村哮夫先生ですが、
中村先生は慶応義塾に英語教諭として
赴任してきた加藤道夫さんの始めての生徒、
であり、
折口信夫さんの教え子でもあるのです。

直々の、教え子から学ぶとは❗❗

中村先生が仰るには、
折口さんが大学の講義室に入られただけで、
空気がずんと沈んで
不気味な気配が漂うのだそうです..

そのお話しを聞いて、

以前、飛鳥で石舞台を見た時の事を
想い出しました。

夏の夕暮れで、周囲には誰も居なかった
のですが、

あの、異次元の世界に誘われていた様な、
不思議な空気。。

『なよたけ』の参考図書として、
折口さんの『死者の書』を読み出しましたが、これがなかなか難解で..

日本文学の中で唯一無二の傑作、と
言われているそうですが、
中村先生でも、最近になりようやく
わかってきました、と…
そうやって笑う85歳の中村先生です。

古代人を支配していたものは、
霊魂である。
魂は体の中を自由に出入りしていた、
と言う。。

は?霊魂、

魂鎮め、、??

魂が自覚なく体を離れて行き、
何かよくない事に巻き込まれないように、
物忌みの品を体に付けたり、、
魂乞いの行をしたり…

それは現代もお祭りで行われる事ですが、
形式化しているだけで、
普段はあまり深くは考えず、
また具体的には捉えていないですね。

魂鎮を『レクイエム』と言う言葉にすれば、
私にも音楽の世界で馴染みがある言葉
ではありますが、

昨今の流行りの¨スピリチュアル¨的な
ものなら、何か抵抗を感じてしまうなぁ..
などと、私は思っていたのです。

折口さんの様な民俗学者がいるとは
知らなかったので。。

でも、日本には妖怪やもののけが、
漫画やアニメなどで身近に感じており、
生活の中では当たり前に《在るもの》
でもありますものね。
『源氏物語』にも、生き霊が
よく出てきますし、、

いにしえの時代から、文学にも
書かれてきている事柄なのですね。。

少々余談ですが、
いま、世間を騒がせている事件も
ちらりと頭を過りました。

よく『魔が差す』と言うけれど、
その魔が差す瞬間って一体
何が起きているんだろう..?

それは私は以前から
ずっと不思議だな思っていて、

なるほど、

《霊魂が体から離れる》
と考えたら少しわかる様な気がしました。

理性だけで捉えきれないのが人間。
コントロールしきれないのが人間。

古代人の生き方は、
シンプルで直感的だったのでしょう。

現代の様に道徳に縛られず、
情報に踊らされるでなく、
自然と共生する中では。

心理の世界では、よく
直感に従って生きよ、等と言われますが、

芝居の勉強をしてはずが、やはり
そこにたどり着いたのは、
偶然ではない様に感じ、面白い。

学問とは、よく生きる為のもの。

結局はそこに行き着くのかな?
などと感じました。

『なよたけ』は表現は難しい要求ばかりで、
稽古では非常に苦しんで居りますが、、

ご興味ある方は是非
来月のリーディングへ。

キャストの半分は演出家の先生方です。

詳細&お申し込み
https://m.facebook.com/events/1082209855202089?slog=83&seq=1263604990&rk=2&fbtype=844&tsid

◆日本の近代戯曲研修セミナー
       in 東京 第14回
「加藤道夫『なよたけ』を読む!」

明治以降の劇作家が新たな演劇を求め、何に挑んだかを探る。
<リーディング&シンポジウム>開催!!

“近代”戯曲を読み直し、“現在”の問題を見つめ直す。
日本の近代戯曲研修セミナーin東京では、2年間にわたって、大正時代の戯曲・作家に焦点を当ててきましたが、今回は時代を移し、加藤道夫が1944年の出征直前に書き上げ、1946年に連載発表された『なよたけ』を取り上げます。

課題戯曲:加藤道夫『なよたけ』
リーディング演出:中村哮夫

○リーディング発表&シンポジウム
2016年9月10日(土)、11日(日)
会場:ストアハウス江古田スタジオ5F
(東京都練馬区旭丘1ー76ー8第5東京ビル5F)
料金:各回1500円(全席自由席)
※協会員は無料 
※チケットをご購入の方は、シンポジウムには両日参加可能です。

日時
9月10日(土)
14:00~ リーディング発表「なよたけ」
17:00〜(予定) シンポジウム(シンポジウムゲスト、三田和代)

9月11日(日)
14:00~ リーディング発表「なよたけ」
17:00〜(予定) シンポジウム
※両日ともに、終了後、懇親会あり。

<問い合わせ(担当:川口)>
●携 帯090 -1016-7092 
●専用メールアドレス kindaigikyoku@yahoo.co.jp

加藤道夫(1918年―1953年)
1940年に慶應義塾大学英吉利文学部に入学し、芥川比呂志らと在学中に新演劇研究会を結成。1944年、青春の遺書といえる長編戯曲『なよたけ』を脱稿した直後に、陸軍通訳官として南方に赴任、死線をさまよった。1946年、帰国。1947年、新演劇研究会は「麦の会」として再出発。1949年、「挿話」上演後、麦の会は文学座に合流。戯曲・翻訳・評論を多く残した。 主な著作に、『襤褸と寳石』、『祖国喪失』、『ジャン・ジロゥドゥの世界 人とその作品』。翻訳に、『君が人生の時』(ウィリアム・サローヤン)、『カリギュラ・誤解』(アルベール・カミュ )、『アルルの女』(アルフォンス・ドオデ)。1953年、自宅書斎で首吊り自殺。享年35歳。–